六本木ヒルズの森美術館(港区六本木6)で5月31日、子どもの視点から世界を見つめる写真や映像作品を集めた「ゴー・ビトゥイーンズ展:こどもを通して見る世界」が始まった。
米国の写真家ジェイコブ・A・リースが、英語が不自由な両親と社会との橋渡しをする移民の子どもたちを呼んだ言葉「Go Betweens(媒介者)」を手掛かりに、さまざまな境界を越えていく子どもたちの姿を描いた作品を紹介する同展。同美術館館長の南條史生さんは「子どものフレッシュで越境していく視点を手掛かりにして、アートを通して世界に目を向けることを目指した。そのような子どもたちの存在はグローバル化時代に力強い存在になり得る」と話す。
展示は5つのセクションで構成。セクション1「文化を超えて」では、リースが移民の子どもたちを写した写真や、宮武東洋が第二次大戦中の日系人収容所を写した写真、国際養子縁組で米国に渡った中国人の娘とアメリカ人の父を写したジャン・オーさんのシリーズ「パパとわたし」など多文化の中で生きる子どもたちの姿を提示。セクション2「自由と孤独の世界」では、本邦初公開となる奈良美智さんの「ミッシング・イン・アクション」や小西淳也さんの「子供の時間」などで子ども特有の孤独感を表現する。
セクション3「痛みと葛藤の記憶」は子どもたちの痛みの経験を、セクション4「大人と子どものはざまで」では大人と子どもの境界にいる思春期の子どもの姿を、セクション5「異次元を往来する」では現実と夢や想像の世界の境界を簡単に越える子どもたちを描いた作品を並べる。250冊の絵本を自由に読める「えほんのとしょかん」も。
同美術館キュレーターの荒木夏実さんはスヘール・ナッファールさんとジャクリーン・リーム・サッロームさんの映像作品「さあ、月へ」を取り上げ、「この作品では彼らの日常とイマジネーションの世界への逃避を描いているが子どもにとってはそこにはっきりとした境界はない。そのような大人と異なる、いわばマイノリティーの視点から世界を見てみることでいろいろなものが見えてくるのでは」と話す。
期間中、子どもをテーマにした映画の上映会やワークショップ、パブリックプログラムなども開催。上映会は、6月17日=「子供の情景」、7月5日=「ウリハッキョ」「ハーフ」、29日=「ぜんぶ、フィデルのせい」、8月9日=「未来を写した子どもたち」「こどもの時間」「はちみつ色のユン」。他に、子どもたちが自由な発想で作品のキャプションを作成する「子どもキャプション・ワークショップ」(6月14日)、詩人のローソン・フサオ・イナダさんとジョン・オーさんのトークセッション「異文化を生きる子どもたち」(7月13日)など。いずれも参加無料(要予約)。
開館時間は10時~22時(火曜は17時まで)。入場料は一般=1,500円など。8月31日まで。