国立新美術館(港区六本木7)で11月8日、現代美術家のクリスト&ジャンヌ=クロードによる講演会が開催された。
共に1935年生まれで、公私ともにパートナーであるクリストさんとジャンヌ=クロードさんは、1961年から共同で作品の制作・発表を開始した。代表作に、オーストラリアの海岸線を布で包んだ「Wrapped Coast」(1968~1969年)、ドイツ国会議事堂を布で包んだ「Wrapped Reichstag」(1971~1995年)など、建物や街、自然を布で包む一連の大作のほか、太平洋を挟む茨城県とカリフォルニアに巨大な傘を無数に配置した「The Umbrellas」(1984~1991年)、ニューヨークのセントラルパークにオレンジ色のゲートを設置した「The Gates」(1979~2005年)などがある。
作品の多くは構想から実現までに長い期間を要し、実現のプロセスにおけるドローイングや関係者へのプレゼンテーション等も作品の一部に含まれる。制作費用はクリストさんが描くドローイングを販売することでまかなうという。
講演では、クリストさんがこれまでに制作した作品を紹介しながら現在進行中の最新作「Over The River」と「The Mastaba」について紹介した。「Over The River」は、コロラド州のアーカンサス川の上に、両岸からワイヤーを渡して布の屋根をつけるプロジェクトで、実現目標は2012年。クリストさんは、ドローイングや関係機関を説得するためのプレゼンテーションの記録写真を紹介。プロジェクトの実現に向け「(連邦政府に対して提出する)最終的な許可申請書は2,029ページにもなった」(クリストさん)と話し、申請書作成にあたり150万ドルの費用を費やしたことを明かした。
また、クリストさんの講演の合間に、ジャンヌ=クロードさんがジョークを交えたトークを行うなど、パートナーとして息の合った様子を見せ、一般質問でも会場から多くの手が挙がるなど、会は大きな盛り上がりをみせた。