東京ミッドタウンのサントリー美術館(港区赤坂9)で3月29日、江戸時代後期の「視覚文化」をさまざまな仕掛けを通して伝える展覧会「のぞいてびっくり江戸絵画-科学の眼、視覚のふしぎ-」が始まった。
蘭(らん)学の振興や顕微鏡などの光学装置が海外からもたらされたことで大きな変換期を迎えた江戸後期の「視覚文化」に注目した同展。西洋の遠近法を取り入れた「浮絵」をはじめとする絵画や、顕微鏡や望遠鏡などの光学装置、ゆがんだ画像を円筒状の鏡に投影することで正常な姿に見える「鞘絵」など約160作品を展示する。
同展は全5章で構成。第1章では、透視図法を取り入れた「浮絵」や空気遠近法などを取り入れた「秋田蘭画」など西洋の手法を用いた絵画や版画を展示。第2章では、「望遠鏡」の視覚を生かした鳥瞰(ちょうかん)図や当時使われた望遠鏡などを、第3章では、顕微鏡とそれによってもたらされた雪の結晶などの意匠を展示。第4章では、動植物そのものや西洋の図鑑を元に描いた「写生画」を紹介。第5章では、光学的現象への関心の高まりから生まれた「影絵」や「寄せ絵」、「鞘絵」などを紹介する。
4月21日までの前半と同23日からの後半で大きく展示替えを行う。同館学芸員の池田芙美さんは「前半は、秋田蘭画の代表作で重要文化財でもある小田野直武の『不忍池図』や、顕微鏡によって観察が可能になった雪の結晶を文様として使った原羊遊斎の『雪華文蒔絵印籠』が目玉。後半では国芳の寄せ絵『みかけハこハゐがとんだいゝ人だ』などに注目してほしい」と話す。
「江戸時代後期は鎖国時代と言われるが、さまざまな形で西洋文化が入ってきた時代でもある。今回取り上げたものは、いわゆる王道の文化ではないが、勢いと多様性を持っていた。そのような江戸文化の特徴も紹介したいと思った」とも。
開館時間は10時~18時(金曜・土曜・休前日は20時まで、4月19日は24時まで)。火曜休館。入館料は一般1,300円ほか。5月11日まで。