提供:データ界隈100人カイギ 制作:六本木経済新聞
交流イベント「データ界隈(かいわい)100人カイギ」が昨年11月21日、六本木の住友不動産六本木グランドタワー(港区六本木3)内のIT企業「ウイングアーク1st」で開催されました。当日はIT企業の社員やフリーランスなど約30人が参加してデータを切り口に交流を深めるなど、会場は終始にぎわいを見せました。
イベント当日の様子
同イベントは、国内外約125カ所で行われてきたコミュニティーイベント「100人カイギ」から派生したもの。データに関する活動を行う人をゲストに招き、ふだんの仕事や活動内容を共有してもらうことで、参加者同士の交流を深めることを目的に開催されました。
「データを捨てよ、町へ出よう!」をコンセプトに、ゲストが100人に達するまで続ける点が特徴で、1回につき4~5人が登壇します。5月、7月に続き、3回目の開催となった今回。当日は「おもしろデータ会」をテーマに5人が登壇しました。
最初に登壇したのは、キュレーターを務める「データパレード」社長の石井亮介さん。幼なじみが営む東京・高田馬場にある町中華「一番飯店」を題材にした取り組みを紹介しました。ノーコードツールを使ってオーダーシステムを構築し、提供時間や売れ筋メニューを自動で記録・可視化できるようにしたところ、ピーク時間帯の仕込み量の調整や、新メニュー開発のヒントにつながっていることを取り上げました。
「データパレード」社長の石井亮介さん
さらに石井さんは、同店の実データを大学の授業で教材として提供していることにも言及。学生たちがリアルな飲食店のデータを分析することで、統計や可視化の学びがぐっと身近になったというエピソードも紹介しました。グラフや数表の向こう側に、実際の店主やお客さんの姿を想像できる点が、教室で扱う架空データとは大きく異なるんだそうです。
石井さんは「特別な企業だけでなく、町の小さな飲食店でもデータを使えば日々の悩みを一つずつ解決できます。将来は、全国の町中華から注文データを集めてオープンデータにし、研究者や事業者に活用してもらえるようにしたいです」と、まちの小さな店とデータの世界をつなぐ構想についても語りました。
2人目に登壇したのは、東急コミュニティーでビル管理業務に携わる鎗野真次さんです。鎗野さんは、大阪・関西万博のハンガリーパビリオンをフィールドに、IoT機器やデジタルツインを活用してビル管理のDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組んでいる事例を紹介しました。建物内のさまざまな情報をセンサーで取得し、3Dモデル上に反映させることで、施設の状態を遠隔から一目で把握できるようにしていると説明しました。
東急コミュニティーの鎗野真次さん
日常的にはオフィスビルや商業施設、マンションなど多様な建物の管理を担当している鎗野さん。現場の担当者が頭の中で持っているノウハウを、データとして見える形にすることが大切であると言及。万博のように短期間で多くの来場者を迎える特殊な施設では、空調や人流の変化が激しく、トラブルが起きたときの影響も大きくなるそうです。そうした現場でデータとデジタルツインを活用することで、異常の早期検知や担当者同士の情報共有がしやすくなったという背景も紹介しました。
「建物の運営は、まだまだ『経験と勘』に頼っている部分が多い世界です。そこにデータとデジタルツインの力を掛け合わせることで、安全面だけでなく、エネルギーの効率化や働く人の負担軽減にもつなげていきたいです」と鎗野さん。「今後は他の大規模施設や日常のビル管理にも展開し、どこにいても建物の状態を理解し、最適な運用ができる未来をつくっていきたいです」と展望を語りました。
3人目に登壇したのは、「日本Tableauユーザー会(JTUG)」で活動する永瀬宗彦さんです。永瀬さんは、世界各地のラーメン店の分布やスープの好みを可視化した「世界ラーメンマップ」の取り組みを紹介しました。アンケート結果とグーグルマップ上の店舗データを組み合わせ、国や地域ごとにラーメン店の数や人気のスープ、食べられる時間帯などをインタラクティブな地図上に表現していることを説明しました。
「日本Tableauユーザー会(JTUG)」で活動する永瀬宗彦さん
永瀬さんによると、このプロジェクトのきっかけは「ラーメン好きな日本や海外のTableauユーザーとの交流」だったとのこと。海外で集めた店舗情報を整理するうちに、「せっかくなら世界中のラーメン好きと情報を共有したい」と考えるようになり、ユーザー参加型でデータを集める仕組みを整備しました。ダッシュボード上では、エリアやスープの種類ごとにフィルタリングできるようにしており、「海外ではラーメンがディナーの“ちょっと良い外食”として親しまれていることが見えてきました」と話しました。
「ラーメンの話なら、データに詳しくない人とも楽しく語り合うことができます。身近なテーマを入り口にすることで、数字の裏側にある文化や生活まで想像してもらえるのが、このプロジェクトの一番の面白さだと思います。今後は、より多くの国・地域の協力者と連携し、観光や店舗間のコラボ企画にもつながる“世界のラーメン地図帳”のようなプラットフォームに育てていきたいです」と構想を語りました。
4人目に登壇したのは、自治体の情報システム部門で働く矢部弦也さんです。矢部さんは、公表されている統計と位置情報を組み合わせ、「時間制利用のホテルの分布」と「出生率」を掛け合わせて可視化したプロジェクトを紹介しました。都心の特定エリアに店舗が集中的に立地している様子や、都道府県ごとの店舗数と出生率の相関を地図やグラフで示し、「数字だけでは見えにくい地域の特徴が、可視化を通じて浮かび上がってくる」と説明しました。
自治体の情報システム部門で働く矢部弦也さん
あわせて矢部さんは、このテーマに取り組んだ背景として、自身のSNS発信をきっかけにコミュニティー参加や兼業に挑戦するようになった経緯にも触れました。最初は個人の趣味として公開していた可視化が話題になり、イベント登壇や他地域のデータ担当者との交流につながったと話します。「役所の外に出てみることで、同じような課題意識を持つ人とつながれた」と、行政の現場とデータコミュニティーを行き来する面白さを語りました。
矢部さんは「今回のテーマのように、因果関係を断定できないデータであっても、そこから仮説や議論が生まれること自体が可視化の価値だと思います。ちょっとした違和感や疑問をきっかけに、データを眺めてみる人が行政の中にも外にも増えてほしいですし、自分もそうした『一歩外に出るきっかけ』を届けていきたいです」と、今後に向けた思いを述べました。
最後に登壇したのは、データ可視化やシステム開発を手がける「BeesConnect(ビーズコネクト)」グループのエンジニア、福村英之さんでした。福村さんは、自作した距離センサーを使い、人の動きをリアルタイムに検知するIoTデモを披露。会場前方に設置した装置の前で参加者が手を動かすと、スクリーン上の数値が瞬時に変化し、わずかな距離の違いがデータとして表れる様子を見せました。
「BeesConnect(ビーズコネクト)」グループ・エンジニアの福村英之さん
デモでは、センサーから得た値をクラウド経由で可視化するまでの流れや、配線・プログラムの考え方もわかりやすく解説。「はんだ付けが必要といっても、実際に使う部品は数点だけ」といった説明に、普段はソフトウエア寄りの参加者からも「これなら自分でも試せそう」という声が上がっていました。
福村さんは「特別な設備や専門知識がなくても、センサーと少しのプログラムがあれば、身の回りの動きや変化をその場でデータにできます。今後も、オフィスやイベント会場など身近な場所で使える仕組みを増やし、現場の『気になる』をデータに変えていくことで、新しい気付きや改善につなげられたらうれしいです」と、IoTとデータ活用の可能性について語りました。
登壇セッション後は名刺交換や情報交換の時間が設けられました。会場には、IT企業の社員やフリーランスで活動する人など約30人が集まり、ラーメンや町中華、ホテル、IoTまで、さまざまな「おもしろデータ」について語り合っていました。
交流を図る参加者たち
同イベントの発起人で、「ウイングアーク1st」メディア事業室長の野島光太郎さんは、「コミュニティーのコンセプトとして掲げる『データを捨てよ、町へ出よう!』は、データやツールを軸にしたコミュニティーでありながら、ダッシュボードの前だけにとどまらず、実際の街や現場に足を運び、肩書や会社の垣根を越えて対話することで、新しい発見や連携を生み出したいという思いが込められています。社内では一人になりがちなデータ担当者が、業種や専門分野を越えて集える『もう一つの居場所』にしていきたいです」と話しました。
「ウイングアーク1st」メディア事業室長の野島光太郎さん
さらに「データに携わる人は、社内に仲間が少ない傾向にありますし、ツールや会社ごとにコミュニティーが分断されがち。今回参加した人たちが、違う会社・立場でも同じ文脈で話せる仲間と交流できていることが何よりうれしかったです。すでに初対面同士がその場で打ち解けて、プロジェクトが立ち上がったケースもあります」と、今回の手応えを語りました。
「これからも、ツールや会社の壁を越えて、同じように悩み、試行錯誤している仲間がゆるやかにつながる場にしていきたいです」とも話し、次回以降の開催に向けた意気込みも。次回開催日は2026年2月19日の予定で、今後も「データ界隈」の人たちが集う場づくりが続いていきそうです。