森美術館(港区六本木6、TEL 03-5777-8600)で6月16日、アラブの現代美術を集めた日本で初めての大規模展覧会「アラブ・エクスプレス展:アラブ美術の今を知る」が始まった。
「ベール」をテーマにしたミーラ・フレイズさんの「グラディエイター」「マドンナ」「ダンス・ウィズ・ウルブス」
同展はエジプトからイラクまでの範囲にあるアラブ諸国で独自の調査を行って選んだ34組のアーティストの作品を展示する企画展で、アラブの現代美術を日本で大規模に紹介する初めての企画となる。作品は、絵画、彫刻、写真、映像、インスタレーションと多岐にわたり、美術館やビエンナーレなどの美術展の増加が著しいアラブ世界の現代美術の現状と多様性を紹介する。
3部構成で、第1部「日々の生活と環境」ではアラブ世界の日常生活に焦点を当て、エジプトのカイロの日常を切り取った写真で構成する「カイロ・ウォーク」などを展示。第2部「『アラブ』というイメージ:外からの視線、内からの声」では「アラブ」というステレオタイプに疑問を投げかける作品を集め、23歳のミーラ・フレイズさんが「ベール」をテーマに制作した作品などを展示。第3部「記憶と記録、歴史と未来」では「過去に起きた事件を知ってほしい」というアーティストの声に応え、イスラエルのレバノンへ爆撃の瞬間を捉えたアクラム・ザアタリさんの「サイダ」などを展示する。
同展を企画した森美術館の南條史生館長は「アラブ諸国は経済的には重要なパートナーでありながら、社会・文化的にはあまりなじみがない。この展覧会をやることでアートからこの地域の文化・社会に目を向けてもらえるのではないかと思い企画した。生活、文化を伝えつつ、戦争などにも目を向けてもらえるよう偏りなく作品を選んだ」と話す。同展のアドバイザーを務めたエミレーツ財団のサルワ・ミクダーディ芸術・文化部長は「現地にお越しいただいたキュレーターの方にはあらゆるステレオタイプを捨てて作品を選んでいただいたので、アラブの人々の人間的な側面に目を向けてもらえると思う」と話した。
開催時間は10時~22時(火曜日は17時まで)。入館料は、一般=1,500円、学生(高校生・大学生)=1,000円、子ども(4歳~中学生)=500円。10月28日まで。