国立新美術館(港区六本木7)で9月14日、スペイン出身の芸術家サルバドール・ダリの回顧展「ダリ展」が始まった。
ダリは20世紀を代表する芸術家の一人で、シュールレアリスムの画家として活躍後、映画や演劇、ファッションの分野へも進出し、多くの著作を発表した。メディアにも盛んに登場し、ジャンルを横断する「現代美術の先駆者」ともいわれる。
同展は、ガラ=サルバドール・ダリ財団、国立ソフィア王妃芸術センター(以上スペイン)、サルバドール・ダリ美術館(米国)の世界の3つの主要なダリ・コレクションと国内の所蔵作品約250点を展示するもので、今年7月から9月に行った京都展の巡回展となる。ダリの大規模な回顧展は国内では約10年ぶりで、過去最大規模。
展示は、年代順に8章で構成。第3章までは初期作品からシュールレアリスム時代までの作品を紹介。美術学校の学生時代に学生寮で出会った後に映画監督として活躍するルイス・ブニュエルを描いた「ルイス・ブニュエルの肖像」、ダリのシュールレアリスム時代を特徴づける柔らかい時計、小枝の髪の毛を生やす女性などのモチーフが描かれた「奇妙なものたち」などを展示する。
第5章から第7章では、アメリカに亡命していた1939年から1950年代まで作品を紹介。第7章では、広島と長崎に原爆が投下されたことに衝撃を受けたダリが、原爆がもたらす恐怖によって支配される陰鬱(いんうつ)な世界を描いた「ウラニウムと原子による憂鬱(ゆううつ)な牧歌」などを展示する。
音声ガイドのナビゲーターを担当した俳優の竹中直人さんは「天才になるには天才のふりをすればいい、これはダリが残した名言の一つ。天才と狂気は表裏一体といわれるが、ダリの作品からは圧倒的な存在感を感じ取ることができるはず」とコメントする。
開催時間は10時~18時(金曜は20時まで)。観覧料は一般=1,600円など。12月12日まで。