特集

50軒以上の激戦区!
広域六本木圏最新クラブ&ディスコ事情

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■広域六本木は50軒以上のクラブ&ディスコの激戦区

現在、六本木交差点を中心にした半径200m内は、大小を含め約20軒以上のクラブやディスコがひしめきあう激戦区で、西麻布や麻布十番まで含めれば50軒以上の店舗が乱立するエリアだ。トランス、テクノ、ヒップホップやオールジャンルなどのダンスミュージックを中心に「velfarre」「vanila」「core」といった都内でも有数の大規模なクラブ&ディスコが軒を並べ、利用客の年齢層が渋谷や青山に比べて若干高いのがこのエリアの特徴のひとつ。また、スーツ姿の会社員や仕事帰りのOLらの姿や外国人が多く見受けられ、他のエリアにはない独特の雰囲気を持つ。六本木圏のクラブやディスコは歴史も古く、昔ながらの固定客も多い。その一方で、新しく生まれてくるクラブやディスコの新業態であるエンターテイメントスペースも様々な切り口やサービスでアプローチを行っている。


六本木交差点 六本木交差点

■外国人、芸能関係者によって築かれた街・六本木

そもそも六本木は、戦後、米軍進駐軍のもとで米国人向けのバーやカフェ、ナイトクラブ、ホテル、レストランなどが生まれ、独特の文化を形成していった街だ。1959年の日本教育テレビ(現テレビ朝日)の開局以降、多くの芸能関係者たちが集まるようなったことで一大繁華街として賑わっていった。六本木にさまざまな人種、幅広い年代の客が訪れ、流行の感度の高い人たちが集まってくるのは、そのような背景があるからこそだと考えられる。そして1970年頃からディスコブームが始まり、「XANADU」 「六本木マハラジャ」といった、いわゆる夜の街の社交場に連日連夜若者が押し寄せ、六本木はナイトカルチャーの発信拠点として注目を浴びていく。その後、2003年の六本木ヒルズの開業とともに「六本木」は多くの方面から関心を集めることになり、周辺のクラブやディスコだけではなくキャバレーやショーパブ、スポーツ観戦バーやスタンディングバーなどのあらゆるナイトスポットは、近年新たな客層の集客に奔走しているようだ。新たに六本木の街の様相が変化している今、各店舗はどのような戦略をとっているのだろうか。


■「velfarre」にみる曜日ごとのイベントマーケティング戦略

1994年、六本木に「ジュリアナ東京」を手がけた折口雅博氏(現グッドウィルグループ会長、コムスン社長)のプロデュースにより、地下3階・地上3階の大型ディスコ「velfarre」が誕生、ここを発信源として全国にテクノブームの一大旋風を巻き起こした。注目したいのは、ブームが落ち着きある今なお同店がクラブ&ディスコの代表格に君臨し続けている要因の背景にある戦略である。同店では、曜日ごとにメインター ゲットを想定したうえで、多彩なイベント展開を図り、ひとつひとつのイベントについても客層のライフスタイルを意識している。曜日ごとに来店する客層や時間帯のマーケティングを行い、それに見合ったイベントや演出を打ち出しているのが特徴だ。


同店が開催するイベントで最も集客力がある毎週土曜日の「サイバートランス」は今年で4年目を迎えた。通常のクラブイベントは1年程度で廃れてしまう傾向にある中、今なお毎回1,000人以上の入場者を得ている秘訣は、来店客のライフステージや趣向を踏まえた、きめ細かな演出にあるようだ。同店のゼネラルマネージャー・山野氏は「4年というと、このイベントに通い出した頃は20歳だった子が24歳になり、ライフステージはもちろん、遊ぶ場所やファッションも変化する。そういった状況の中でリピーターでいてもらうために、選曲、空間の演出についても、進化させている」と話す。金曜日は比較的大人層をメインターゲットにしたイベントを展開。70年代から80年代のディスコをイメージしたイベントはターゲット層の青春時代への懐古心をくすぐり、話題をよんでいるようだ。しかもそれらは20代前半の若年層には新鮮に映るようで、若年層客からも予想外に受けがいいという。また、7月からの新しい試みとして、金曜日の深夜1時~5時の時間帯にフロアをバーラウンジ風にする営業を始めた。金曜日の深夜の六本木は、仕事帰りのビジネスマンが多いことから「金曜日に仕事を終えてやってくる人には、刺激的に遊ぶというよりも、ほっと一息つく場所が求められているのではいか」という発想のもと「楽しむところ」だけに留まらない「癒される場」としてのクラブの可能性に挑戦したものといえる。一方、日曜日については、土曜の深夜にかけて六本木周辺で遊んでいた人や早朝まで働く人のニーズを想定し、早朝5時から昼間まで、毎週内容を替えてイベントを開催している。この空白の時間帯に対応する商業施設や店舗は少なく、なんと毎週1,000人から1,500人ほどの来客があるという。この時間帯は、ホステスやホストなど「夜の六本木」の接客業者の多い六本木独特のニーズともいえる。


このようにきめ細かな顧客のニーズを読み取って提供していく同店は、六本木にとってはなくてはならない存在になっていると言えそうだ。


velfarre
velfarreイベントの模様 velfarreフロア velfarreゼネラルマネージャー・山野氏

■「女性のためのクラブ」というコンセプトクラブ

六本木には新しいコンセプトを掲げたクラブも続々と登場している。2005年春に六本木のロアビル内にオープンした「CLUB REINO」は、「女性のためのクラブ」をコンセプトに掲げ、ヘアサロンやネイルサロンを併設しており、女性客に対してアプローチを仕掛ける。同店の菰原支配人は「六本木にはクラブは多数存在するが、女性が楽しめるクラブがなかった」と話す。同店は女性向けのイベントを中心に開催しており、有名企業から協賛を受けて香水などをプレゼントするイベントでは約1,500人規模の来場者数があり、「1,500人のうち1,000人が女性客」という女性客からの人気、支持の高さを背景に高い集客力を誇っている。また、土日のみ営業するヘアサロン、ネイルサロンの出店の選定にもこだわり、「スタイリスト目当ての女性客も多い」と付加価値によるリピーターの創出にも成功した。同店は「女性のためのクラブ」というコンセプトを打ち出したと同時に、「女性の集まるところに、男性も集まってくる」という流れを見通したことにより、来場者ボリューム・客単価のアップを図った。 これは六本木における戦略の好例といえるだろう。明確なワンコンセプトを打ち出していく展開は今後もひとつの手法として他店舗でも応用されていくと考えられる。


CLUB REINO
CLUB REINO ホール CLUB REINO サロン

■六本木の昼の変化に合わせて変容するクラブ

2007年に「東京ミッドタウン」や「国立美術館」などの開業が予定されており、新旧の文化を融合させた新たな六本木カルチャーの誕生が期待される。「velfarre」の山野氏が「ヒルズができて昼の六本木が変わった」と話す通り、ますますその傾向は強くなりそうだ。また、同氏は「今後ますます昼の営業展開が重要になってくるだろう」とも話す。既に同店では平日昼間の時間帯については、音響施設、映像や特殊照明を用いた空間演出力を強みに、レンタルスペースとして営業を行い、企業の社内パーティーや、セミナー、記者会見、結婚式などに利用されている。その他、西麻布にあるダイニング&クラブ「alife」ではランチメニューを開始するなど、徐々に「クラブの昼の展開」が見られる。今後は六本木ヒルズと東京ミッドタウンにより、夜だけでなく「昼の六本木」がブランド化する兆しが見える中、「昼の六本木人」をいかに取り込めるかが重要なポイントと言えそうだ。


東京ミッドタウン alife

クラブやディスコはこれまで、営業時間、ターゲット、趣向など、限定された層をターゲットとした娯楽空間であったが、近年、街の変化が著しい六本木のクラブが激戦区での生き残りをかけて、多種多様のアプローチを始めているは必然の流れかもしれない。街の変化と共に、六本木のクラブの楽しみ方が今後どのように拡がっていくかが注目される。

東京ミッドタウン
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