特集

麻布十番にベジタブルカフェ「イートモアグリーンズ」オープン!
オーナー後藤氏に食の「今」を聞く

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■ニューヨークをイメージしたベジタブルカフェ

 ニューヨークのローワーイーストサイドやイーストビレッジにあるベジタブルカフェをイメージしたという店内は、中央にオープンスタイルのキッチンを設ける。テラス席もあり、子ども連れや、外国人など様々な人たちが来店するという。

  「イートモアグリーンズ」(和訳で『もっと野菜を食べよう』)の名からもわかるように、メニューは野菜など主に植物性素材を使用し、肉・魚・卵を一切使っていない。ベジタリアンの中の「ビーガン」(動物性食品を一切食べない)を実践する人とベジタリアンでない人が一緒に食事を楽しむことを目指した料理が特徴だ。

 「ドーナッツプラント」の国内展開で知られるビッグイーツの後藤代表が、日本でベジタブルカフェを開く構想をもったのは6年前。ドーナッツプラントを日本でオープンさせるために、度々ニューヨークへ足を運んでいた時だった。

■ニューヨークで感じた食に対するストイックな意識

 「アメリカ人には日本人がイメージするように、ステーキなどボリュームのある料理を好む傾向があるのは事実ですが、一方でニューヨークには、食に対して非常にストイックな意識を持った人たちがたくさんいます」と、後藤代表は当時ニューヨークで感じ取った雰囲気について振り返る。

 本国のドーナッツプラントのオーナー、マークさんもその1人。後藤代表は、ベジタリアンのマークさんと多くのベジタブルカフェを訪れ、「おいしい」ことだけでなく、「体にとって安全であるか」を見極め、条件を満たすものを出す店を選び、体に入れる食べ物とストイックに向き合う人たちを目にした。

 

■9・11以降のニューヨークでの「食」の変化

 「9・11のテロ以降、ニューヨークでは食生活がすごく変わった。それまではベジタリアンというと、宗教的な動機からそういった選択をしている人が多かったのが、9・11以降、人々の世界平和を願う気持ちが、ベジタリアン、オーガニックという食生活の嗜好を活発にしたのではないか」

  その理由について後藤代表は「例えばシマウマとライオン。ライオンは他の動物を殺して肉を食べるが、シマウマは植物を食べ、動物を殺さない。これが人間にも置き換えられ、動物の肉を食べずに野菜やフルーツを食べていると、人を攻撃したりせず『平和に幸せに暮らそう』という精神が宿る、と考えられているからだ」と話す。

  実際、「スピリチュアルな動機」からのベジタリアンが増え、ニューヨークにもベジタブルカフェやオーガニックカフェが増えているそうだ。

■日本でベジタブルカフェを開く

 日本にはベジタリアンに向けた店が比較的少なく、しかし、日本でも食に対する高い意識を持った人は増えている。後藤代表は「ニューヨークのベジタブルカフェが東京にもあったら」と考えた。

 また、ドーナッツプラントでの経験が開店の思いを後押しした。

 「以前、お店に、卵を食べられないお子さんとお父さんが来店されました。そのお子さんはアレルギー体質で、友達の家に誕生日会で招待されたときも、ケーキにはたいてい卵が入っているため、みんなと同じものを食べられないのですが、ドーナッツプラントのドーナッツはアレルギーが出ず、安心して食べられるから、と買いに来てくれたのです」

 東京でベジタブルカフェを始めるにあたり、日本ではベジタリアンのみを対象としたマーケットはまだ成立しにくいという事情と、「ベジタリアン以外の人にもお店に来てもらいたい」という思いから、ベジタリアン以外のお客さんも楽しめる食事を提供することに決めた。例えば「根菜のボロネーゼ」では、パルメザンチーズを使わず、パン粉など乳製品以外で作った代替品を使用する。このようにして、ビーガンの人もそうでない人もおいしく食べられる工夫をしているのだ。(写真=Weeklyベジタブルサンドイッチとデイリーベジタブルピッツァ) 

 ■日本の食産業の2分化について

 後藤代表は、今の日本の食産業について、2つの流れがあると考えている。1つは量産して多く流通させるというライン。もう1つは、日持ちはしないが、本当においしくて安全なものを小さなマーケットで勝負させることだ。

 「本当に美味しい商品を作ると、誰もが、加工せずそのままの状態でお客さんに届けたいと考えるだろう。しかし多く売るために巨大な流通に乗せるには、「賞味期限○日間以上」が必要条件となり、賞味期限を長くするために添加物を入れる。しかし、そういった添加物は体の中に少しずつ蓄積していく」

 後藤代表自身、賞味期限の長いものは避け、素材の味をきちんと出しているものを選んで食べるようになったという。

 イートモアグリーンズは、2つの流れの後者にあたるが、小さなマーケットを次のステップへとつなげるビジョンを持っている。

 「最初はニッチなマーケットかもしれないが、その中でメジャーになれば、近い将来、おいしくて賞味期限の短いものがうまく流通に乗り、ビジネスとして発展する可能性はある。僕らはそれを目指します」 

  「イートモアグリーンズ」というネーミングについて後藤代表は「少々長いですが、店の名前自体に『もっと野菜を食べよう』というコンセプトを込めたかった」と話す。ロゴマークの「g」は豆が空に向かって伸びているイメージだ。

 

■脳で感じるおいしさ

 同店では月に数回、食材を仕入れている農家の人に店頭へ出向いてもらい、お客さんに直接野菜を販売してもらう「ウイークエンドマーケット」を開催している。飲食店では珍しい試みだ。

 「人が『おいしい』と感じるのは、味で感じるおいしさのほかに、もうひとつ、『脳』で感じるおいしさというのがある」と後藤代表。例えば、イチゴであれば、そのイチゴが「どこで、どんな風に」作られたということを知った上で、かみしめながら感じるおいしさだ。

 「生産者である農家の人たちは、自分たちがつくったモノを食べてくれている人たちに、そういった『脳』で感じるおいしさを味わってほしい、もっと食材の生産過程の話をしていきたい、という思いを持っている」

 ウイークエンドマーケットは「農家とお客さんをつなぐ場」なのだ。

 ■食を通して社会に伝えたい、シンプルなメッセージ

 後藤代表に、イートモアグリーンズを通じて、社会にどんなメッセージを発信したいかを聞いた。

 「1日の中で最も楽しい時間は、やはり食べている時だと思います。とてもシンプルなことですが、おいしいものを食べながら誰かと話す、そういった1日の中でいちばん楽しい時間を提供し続ける立場でいたい。そして『おいしい』だけでなく、『安全』ということを大事にしていきたいです」

 

 

 

■インタビューを終えて

 今、人々の食に関する価値の尺度は、単純な美食や価格以外へ拡大している。健康への配慮を含め自分自身のライフスタイルから、社会を取り巻く環境問題、世界情勢についてどのような考えを持ち、どうコミットしていくのか。後藤代表が話すように、食は、そういった意思や思想を日常の中で具現化できる、ひとつのアクションなのかもしれない。

 今後ますます、人々の食への真摯なる姿勢に応える「意思を持った」食サービスが求められるだろう。

 

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