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TOTOギャラリー・間で建築家・伊丹潤さん初回顧展-代表作24点展示

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 乃木坂の建築・デザイン専門ギャラリー「TOTOギャラリー・間」(港区南青山1、TEL 03-3402-1010)で現在、「伊丹潤展 手の痕跡」が開催されている。

三つの美術館「水」(韓国、済州島/2006)

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 同展は、2011年6月に急逝した建築家・伊丹潤さんのデビュー作から没後も継続中のプロジェクトまで代表作24点を紹介する初の回顧展。1937(昭和12)年東京生まれの伊丹さんは1975(昭和50)年に六本木に建てた自宅事務所「墨の家」が高い評価を受け注目を集めた。80年代からは両親の出身地である韓国にも活動の場を広げ、晩年は済州島のリゾート開発プロジェクトなど韓国を活動の中心とした。2005年にはフランス共和国芸術文化勲章「シュヴァリエ」を受勲、2008年に韓国建築文化大賞優秀賞、2010年に村野藤吾賞を受賞した。

 第1会場では、その済州島のリゾート開発プロジェクトを中心に紹介。自然環境との調和を目指したこのプロジェクトのために設計した「風」「石」「水」という3つの美術館は、その土地の風や石や水を感じることができる建築自体がアート作品のような建物。「二つの手の美術館」は信仰の対象になっているという島に向けて手を合わせたようなデザインになっている。

 第2会場では、デビュー作「母の家」から近作までの模型や写真を壁面に飾り、中央のテーブルには請求書から紙ナプキンまで、さまざまな紙に描かれたスケッチやドローイングをびっしり並べ、中央には200分の1の模型が詰まったガラスケースを置く。さらに、亡くなる2日前まで描いていたドローイングの複製が机の上に置かれた書斎も再現し、フランスで個展を開いた際に制作されたインタビュー映像も流している。

 同ギャラリー広報の小野慶子さんは「フランス国立ギメ東洋美術館で個展が行われるなど世界的には評価されているが、日本ではあまり位置付けられて来なかった。今回はスケッチやドローイングなど思考の過程が手に取れるようなものを展示することで伊丹さんを捉え直そうという企画」と話す。同じく広報の桑原由典さんは「建築の世界では理論があった方がメディアに取り上げられやすいが、伊丹さんはロジカルな言葉はあまり発さず、作品を見てくれという人だった。しかしモノづくりが見直される現代においては、伊丹さんのようにモノそのものに思いや情熱を込める作家が見直されるのでは」と話す。小野さんは「そうした意味でも、伊丹さんを知らない若い世代にこそ見てほしい」とも。

 開館時間は11時~18時(金曜は19時まで)。日曜・月曜・祝日休館。入場無料。建築会館ホール(港区芝5)で5月17日、シンポジウム「伊丹潤・ひらかれる手」も開く。

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