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南條史生・森美術館館長に聞く!-六本木でアートナイトを開催する理由

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背景は森ビルに保存されている東京の都心部と臨海部の1/1000模型

-「文化・交流力」が極端に低い東京

森記念財団が統計をとっている「世界の都市総合力ランキング」というものがあるんです。2011年の調べによると、東京はニューヨーク、ロンドン、パリに次いで4位でした。経済力、研究・開発などは1~2位を誇るのですが、「文化・交流」は他の3都市と比較してガクッと低い。シンガポールに負けてしまっています。経済産業省が取り組む「クール・ジャパン」でも、「東京をなんとかしなくては」と何度も議題に上がっています。都市が総合的な力を持つためには、知的生産、クリエーティブな部分を集積していく自然な仕掛け、魅力が必要です。

-「文化・芸術」は、都市に人や情報を引き寄せる「磁力」である

わかりやすい例でいうと、ニューヨークのソーホー地区。昔は荒んだ街でしたが、自然発生的にアーティストが住むようになっておしゃれになり、今やアーティストも住めないくらい土地代が上がってしまいました。ロンドンの倉庫街に作られたテートモダンも、年間500万人(2010年)が訪れ、周辺には文化施設やギャラリー、カフェやショップなどが建ち並び、流行の発信地になりました。荒っぽい街に「文化」が入ることで、やさしい街に変わっていくのです。

日本も変わりつつあります。例えば2008年にオープンした青森の十和田市現代美術館は、年間65万人(2011年)を動員し、作品が美術館を飛び出して街に広がる「まちなかアート」で街に人の流れを生み出しました。石川県の金沢美術館も、「アートアベニュー構想」で街を活性化し、経済を支える施策をとっています。

-森ビルが掲げる「職・住」と「文化・芸術」を備えた複合都市づくり

私たちは、コンサート専用のサントリーホールを備えたアークヒルズや、美術館や映画館、会員制クラブ、教育機関、ライブラリー、イベントスペースなどを備え「文化都市」をコンセプトにした六本木ヒルズなど、芸術や文化を軸にまちづくりを進めてきました。その結果、例えば六本木では、この10年で人の流れが変わりました。地下鉄の乗降客数も、六本木駅は10年間で1.7倍。六本木ヒルズの美術館施設には年間190万人が訪れています。夜のイメージが強かった六本木ですが、昼間の来客が増えたことにより、ファッションや雑貨、カフェ、車などのショップが軒を連ねるようになり、夜はビルの上のレストランにも人が集まります。

森美術館は年中無休で22時までという、夜ご飯を食べたあとでも楽しめる世界的にもめずらしい美術館です。「東京に行ったら森美術館に行こう」皆にそう思ってもらえるよう、国際的な観光客からの視線を意識し、バイリンガル表記の徹底をしています。これらの努力により、上野に匹敵するアートの集積が、六本木にできたのではないでしょうか。外国人にとっても宿泊しているホテルから近く、地下鉄で行きやすいというのは嬉しいことですよね。

-震災復興に向けて

六本木アートナイトのようなイベントは、2002年にパリでスタートした一晩で50万人を集めるオールナイトのアートイベント「ニュイ・ブランシュ」など、世界にも多くあります。今回、文化庁のバックアップがあるのは、海外へのPRで日本がどれだけ頑張っているか知ってもらい、足を運んでもらうためです。昨年は震災で中止になりましたが、様変わりしてしまった日本の復興に向けて、東京が、六本木が、日本を引っ張っていかなくてはいけません。「文化・芸術」という要素で街は活性化するし、大きな磁力になると思っています。アートナイトをまだ体験していない人は、ぜひ来年遊びにきてください。

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