東京ミッドタウン・ガーデン(港区赤坂9)の「21_21 DESIGN SIGHT」(TEL 03-3475-2121)で9月21日、企画展「田中一光とデザインの前後左右」が始まった。
デジタル化した一部の本は「ページをめくって発見するドラマを見てほしい」と小池さん
20世紀後半を創作に生きた日本を代表するグラフィックデザイナーの田中一光さん(1930~2002)。伝統の継承から未来の洞察、東と西の国々との交流など、本人の言う「デザインの前後左右」を見据えたアートディレクターでもあり、多くの思索に満ちた言葉を遺(のこ)した。同展のタイトルは、著書「デザインの前後左右」に基づくもので、デザインの生まれる環境を示唆し、コンテンポラリーな立脚点をあらためて指摘する。展覧会ディレクターは、クリエーティブ・ディレクターの小池一子さん。
「この展覧会は、社会・文化・生活の望ましい姿を思い描き創作に向かった『田中一光の仕事』を今こそしっかり見たいという願望から生まれた。展示したい作品の多さに圧倒されつつ、細やかな仕事とその背景をできるだけ生かし、素のまま見ていただきたい」と小池さん。
会場の構成とグラフィックデザインを担当したアートディレクターの廣村正彰さんは「本は『紙の建築』とも言われるが、田中さんが本にかける情熱はすごかった。ホテルにこもって作業したり、5分の1サイズのサンプル本を作って毎日ページをめくり、ボロボロになるまで眺める。そんなこだわりの末に誕生した作品のダイナミズムを感じてほしい」と話す。
ギャラリー1では、装丁や構成を手掛けた重厚な特装本や豪華本をはじめ、リーフレットや小冊子など約150冊を展示。ギャラリー2では、グラフィック表現の広がりと奥行きを3つのテーマに分け、完成品の縮刷とともに原画や校正紙など貴重なアーカイブを10のテーブルに配置し紹介。壁面にはオリジナルポスターやグラフィックアート(版画)68点を展示する。これ以外に、田中さんのデザイン思想の流れをくみ、インスピレーションを受けたデザイナーたちによる新作も展示する。
期間中、関連プログラムとして、三宅一生+Reality Lab.や祖父江慎さん、茶道家の千宗屋さん、横尾忠則さん、和田誠さんらによるトークシリーズカンバーセーションや、活版印刷のワークショップなどを予定。プログラムの詳細はホームページで確認できる。
開催時間は11時~20時。火曜休館(10月30日、12月25日は除く。年末年始は12月27日~1月3日)。入場料は、一般=1,000円、大学生=800円、中学生=500円、小学生以下無料。2013年1月20日まで。