森美術館(港区六本木6)で3月25日から、「六本木クロッシング2016展:僕の身体(からだ)、あなたの声」が開催される。
3年に1度、日本のアートシーンを総覧する定点観測的な展覧会として2004年から開催してきた「六本木クロッシング」。5回目の今回は、日本、韓国、台湾の4人のキュレーターによって選ばれた20組のアーティストのバラエティーに富んだ表現を通して、日本の現代アートを幅広い視野から検証し、今日の社会とアートについて考察する。
テーマとして、「自己と他者、身体とアイデンティティーの関係性」「過去との新たな出会い」「独自の視点で描く、オルタナティブな物語」「人と『モノ』の新たな関係性を探る」「変容するジェンダーへの意識と未来の可能性」の5つを設定。テーマに沿って、それぞれのアーティストが歴史や身体、性、風景についての新たなイメージを描き出す。
「自己と他者、身体とアイデンティティーの関係性」に出展する片山真理さんは、病気により9歳から両足が義足に。自身の姿を撮影した写真や、自身の体をかたどった人形を通して「身体」についての問いを投げかける。松川朋奈さんは、様々な人物にインタビューを行い、その人の言葉をタイトルに、体の一部や持ち物を作品として絵に描く。今回は7点のうち6点で、六本木で働く女性を対象に作品を制作、「キャバクラ」で働く女性を対象にした作品「でもこれでようやく、私らしくいられるのかなって思ったりもする」では、彼女が脱ぎ捨てた洋服を描いている。
「変容するジェンダーへの意識と未来の可能性」に出展するミヤギフトシさんの作品は同性愛をテーマにした映像作品「花の名前」など。同館キュレーターの荒木夏実さんは同作を「境界を超えた、二項対立ではないところから見えてくる可能性を感じさせてくれるような作品」と評する。長谷川愛さんの「<不>可能な子供」は女性同士のカップルの遺伝子情報から2人の子どもの姿をCGで制作し家族写真などにしたもの。荒木さんは「もはや身体も自明のものではなく、私たちの身体を誰がどのように規定するのかも問われるようになる。世界と自分との新たな関係性を探るという意味でも、今回の展覧会の象徴的な作品と言える」と話す。
出展アーティストとキュレーターによるクロストーク(3月26日・27日、6月12日)、長谷川さん、アーティストのスプツニ子! さんなどによるトークセッション(5月14日)などのイベントも開催する(参加無料、要予約)。
開館時間は10時~22時(火曜は17時まで)。入場料は、一般=1,800円など。7月10日まで。