国立新美術館(港区六本木7)で6月18日、ロシアのバレエ団「バレエ・リュス」の、マティスがデザインしたコスチュームなどを展示する「魅惑のコスチューム:バレエ・リュス展」が始まった。
フランス語で「ロシア・バレエ」を意味する同バレエ団は1909年にセルゲイ・ディアギレフが創設、ロシアのバレエをパリなどヨーロッパに紹介するとともに、当時の前衛的な芸術家とコラボーレションし、ヨーロッパ各地で公演を行った。
展示は4部で構成され、代表的な演目の衣装約140点とスケッチや写真などの資料を展示する。創設から1913年までを扱った第1部では、「クレオパトラ」や「シェラザード」「火の鳥」「ペトリューシュカ」などを紹介。ストラヴィンスキーが作曲家として広く知られるようになるきっかけとなった作品としても知られる「火の鳥」では、ロシアの民族衣装を基にした独特のデザインの衣装を展示。「ペトリューシュカ」や「青神」では、当時スターとして活躍したニジンスキーが実際に着用した衣装をニジンスキーの写真などと共に展示する。
第2部「モダニズムの受容」では、それまで歴史的な題材やオリエンタリズム的な題材を扱っていた同バレエ団が現代的なテーマに取り組むようになった1914年~21年を扱う。この時代、ディアギレフは当時の前衛的なアーティストとのコラボレーションに積極的に取り組み、アンリ・マティスやピカソに舞台美術を依頼。「ナイチンゲールの歌」でマティスがデザインした衣装などを展示する。
ディアギレフが亡くなる1929年までを扱う第3部では、ジョルジョ・デ・キリコがデザインした「舞踏会」や、ジョルジュ・ブラックがデザインした「ゼフィールとフロール」の衣装などを展示。第4部では1932年に同バレエ団の遺産の一部を引き継ぎ創設された「バレエ・リュス・ド・モンテカルロ」を取り上げる。
同展を企画したオーストラリア国立美術館装飾芸術・デザイン部門シニア・キュレーターのロバート・ベルさんは「『青神』の衣装の内側にはニジンスキーが演じるときに塗っていた青のドーランが今も残っている」「マティスはデザインしただけでなく、最後の仕上げミニ図から筆を入れた」などのエピソードを披露。「衣装は展示できても、バレエは展示できない。衣装を見ながら当時どのように踊られていたのかを想像してほしい」とも。
開館時間は10時~18時(金曜、8月16・23・30日は20時まで)。火曜休館。入館料は一般=1,500円など。9月1日まで。