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泉屋博古館分館で陶芸家「板谷波山」展-没後50年で重文など全170点

展示の様子

展示の様子

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 泉ガーデンの泉屋博古館分館(港区六本木1)で6月14日、昨年没後50年を迎えた陶芸家・板谷波山の回顧展「板谷波山-光を包む美しきやきもの」が始まった。

円熟期に制作した青磁なども紹介

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 板谷波山は1872(明治5)年生まれ。東京美術学校で彫刻を学び、彫刻の教師となるが、20代で陶芸家に転身し、現在の北区田端に窯場小屋を築く。正規の美術教育を受けた波山は、アール・ヌーヴォーの手法を取り入れるなどすることで、それまで工芸としか捉えられていなかった陶芸を芸術に高め、陶芸家の社会的地位を高めた。1953(昭和28)年には陶芸家として初めて文化勲章を受賞。1960(同35)年にはいわゆる「人間国宝」の候補となるが辞退し、92歳で亡くなる1963(同38)年まで作品を作り続けた。

 同展は波山が創造した釉薬(ゆうやく)「葆光釉」に着目。1917(大正6)年の作品で、2002年に明治以降の陶磁器としては初めて国指定重要文化財に指定された「光彩磁珍果文花瓶」など葆光釉を用いた作品を中心に紹介する。同作品は同美術館の礎となった住友春翠が当時としては破格の1,800円で購入し、現在も同館が所蔵する。

 展示は年代順に展開され、東京美術学校時代に制作した彫刻作品などの初期作品、アール・ヌーヴォーを取り入れた「高揚期」作品、青磁や白磁に取り組んだり用具としての陶磁器を見直し茶道具を制作したりした円熟期の作品、窯場の調査で発見された陶器片などの資料も展示する。期間中2度展示替えを行い、全174点を紹介する予定。

 同展を監修した学習院大学の荒川正明教授は「今回の展示は名品のほとんどを展示していることに加え、窯場の調査結果など最新の研究成果を紹介していることでいろいろな意味での集大成と言える展示になった。波山は作品数が少ないこともあり一般にはあまり知られていないが、日本画で言えば若冲にも匹敵するくらいの稀有(けう)な才能であった。この展示によって多くの人に知ってもらえれば」と話す。

 開館時間は10時~16時30分。月曜休館。入館料は一般=800円など。8月24日まで。7月5日・26日の15時からは荒川さん、6月21日・7月19日の15時からは古陶磁修復家の繭山浩司さんによるギャラリートークも。

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