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「新しいアート&テクノロジーの領域の価値が生まれる」JTQ Inc.谷川じゅんじさんに聞く「Media Ambition Tokyoと六本木」(前編)

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谷川じゅんじさん谷川じゅんじさん Photo by Kenshu Shintsubo

- 今回3回目を迎えて、いかがでしたか?

いま、凄く聞こえて来るのが、「やっとわかった」みたいな声なんです。MATは去年も六本木ヒルズの東京シティービューでやってたんですが、どうしても展覧会というイメージが強かった。参加する人たちも「展覧会に作品を出品する」みたいな捉え方だったのが、今年いっきに開催箇所が広がって、アンスティチュ・フランセとか色んな所で、しかも皆全然違う事をやることで「あ、誰でも参加していいんだ」と気づいてもらえた。それが今年は多分大きかったですね。

- 凄いアーティストが作った何かを見に行くと言うのではなく、それぞれのサイズでそれぞれ表現したいものを作るということですか?

まさにここの「MAT Lab.」とか、「作品ですか?」っていう質問をされるんですけど、作品って言えば作品だし、作品じゃないと言えば作品じゃないんです。なぜなら、まだいまも作ってますから。ここでは、いろんな次のプロジェクトの制作をやっていて、そうやって何かを生む現場ってなかなか普段見ることはないですよね。普段は閉じていて見えないバックエンドをここ六本木で見せられたのはまた象徴的でよかったなと思うんですよ。

MAT Lab.MAT Lab.

- 谷川さんは、できるだけ多くの人に見えるように作っていくということを大切にしていますね。

今年、拠点の1つになっているIMA CONCEPT STOREもMATが始まってから入館者数、来店者数がすごく増えたそうですが、そうやって人が動くということは大切にしています。現代って、動かなくても、動いている気分になるじゃないですか。例えば、花火をネットで見て「スターマイン凄かったね」みたいな話をするけど、実際に視界の端から端までスターマインがばっと広がったのを右脳的に見た人と、映像で「あ、凄いね」っていう風に左脳的に見た人では、実際にその人の中に響いてるエネルギーみたいなものは全然違いますから。

- 今回、今までとの違いを凄く感じられますか?

例えば、1年目2年目を地図上の点として見ると、1回目は六本木に1ヶ所で、2回目は青山と六本木に2ヶ所、それが3回目で一気に7ヶ所になった。そう意味では点が線になって、さらに面になってる。物凄いわかり易く進化してますよね。なぜMATが3年で面にまでなったかといえば、今そういう物を東京が必要としているからだと思います。みんなが何かを「ちゃんと伝えたい」とすごく思っていても、「ちゃんと伝わりにくく」なってるんです。だからこそ、ちゃんと伝えたくなっているんですよね。

Oubiopoアンスティチュ・フランセ東京の中庭で展開された「Oubiopo」

- とても簡単に伝える方法があるだけに伝わらない?

情報量は増えているけれど、「ちゃんと」伝えるという、ちゃんとのツボに入るのがものすごく難しくなってる。まして、人に勧められるくらい確信できているかというと、なかなか難しい。確信を持つにはやっぱり体験がすごく良くて、確信をもって体験する。人間が肉体的に空間をもって、命が肉体という空間を纏って動いている限り、その空間と空間が色んな意味で干渉しあう。それによって新しいケミストリーが生まれるので、やはり場を設けてそこに皆を呼んでそこで伝えるというのは伝わる情報量が全然違うし、黙っていてもエネルギーは感じられるし。

- それがまさにMATの意図ですか?

メディアとテクノロジーアートというものが生まれるその現場を見せるというのがテーマだけど、きょうやってることは全然MATには関係の無い事なんです。だけどそれが、MATですから。東京で新しいテクノロジーアートの芸術祭をやるという事じゃなく、いわゆる最先端のテクノロジーアートの展覧会をやっているわけでもない。あくまでもそういう新しいアート&テクノロジーの領域の価値が生まれる、本当にエッジなものを、とにかく見える形にして5日間東京にインストールするショーケースです。

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